注目を集める技能実習制度ですが、その受け入れ方法には、「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。ほとんどの企業が監理団体を通して行う団体監理型を採用していますが、そもそも監理団体とはどのような機関なのでしょうか?
本記事では、監理団体の役割や業務などを、詳しく解説していきます。
目次
監理団体とは
監理団体...技能実習制度で定められた監理事業を行う非営利団体
監理団体の主な活動内容の1つに、日本の企業が海外の技能実習生を受け入れる際のサポートがあります。現地での募集から、面接、入国手続きまで、細かくサポートをしているので、海外に支店を持たない企業が技能実習生の受け入れやすくなります。
要件と欠格事由
監理団体になるのは、以下の要件を満たす必要があります。
- 営利を目的としない法人であること
- 事業を適正に行う能力を持っていること
- 監理事業を健全に遂行できる財産的基礎を持っていること
- 個人情報を適正に管理するための措置を講じていること
- 外部役員または外部監査の措置を実施していること
- 基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次ぎについての契約を締結していること
- 第3号技能実習を行う場合は、優良要件を満たしていること
- 監理事業を適正に遂行できる能力を持っていること
監理団体としての許可を得るには、下記のような欠格事由があります。
監理事業の適正な運営を行うために、暴力団等の反社会勢力や不正行為を行った者は許可を得ることができないようになっています。
- 禁固以上の刑に処せられ、執行が終わってから5年が経過していない者
- 禁固以上の刑の執行を受ける事がなくなってから5年が経過していない者
- 技能実習法による処分等を受けて監理団体の許可を取り消されてから、5年が経過していない者
- 出入国や労働に関する法律に関して不正や不当な行為をした者
- 暴力団員または、暴力団員でなくなった日から5年が経過していなかったり、暴力団員等がその事業活動を支配していたり、業務に従事させていたりした場合
- 成年被後見人や被保佐人や破産手続開始の決定を受けて、まだ復権していない者
- 営業をしているのが未成年者だった場合の保護者が、成年被後見人だったり、被保佐人だったり、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていなかったり、反社会的勢力の組織に関与していた場合
許可区分
監理団体の許可には一般監理事業と特定監理事業の2つの区分があり、それぞれ監理できる技能実習や許可の有効期間に違いがあります。それぞれの違いについては、下記の表を参照ください。
また、最初はすべての団体が特定監理事業からスタートし、実績を積み高い水準を満たした優良な監理団体のみ。一般監理事業の許可を得ることができます。技能実習3号を行うことができるのは、優良な監理団体のみということになります。
区分 | 監理できる技能実習 | 許可の有効期限 |
特定監理事業 | 技能実習1号~2号 | 3年または5年 |
一般監理事業 | 技能実習1号、2号、3号 | 5年または7年 |
監理団体の役割
続いて、監理団体の役割について解説していきます。
団体監理の主な役割は以下の3つです。
- 監理・指導
- 技能実習計画に基づき技能実習の実施状況を確認し、技能実習が適正に進められるよう企業等を監理・指導する。技能実習計画に基づいて行われていない場合、適正な実施について企業等を指導します。
- 技能実習制度の趣旨の理解と周知
- 受入れ企業が技能実習生を安価な労働力と考えないように、技能実習制度の趣旨が国際協力、国際貢献にあることを受入れ企業・送出し機関に対して周知する。技能実習制度の正しい趣旨を周知することで、技能実習生を安価な労働力と考えている実習実施機関や送出機関がの参入を防ぎます。
- 監査・報告
- 3ヶ月に1度、定期監査を行う。実習生1号については1ヶ月に1回の定期巡回にて実習実施機関に対し監査を行い、その結果を地方入国管理局に対し報告します。
監理団体の主な業務
ここまで説明した、監理団体の役割を果たすため、監理団体が行うメイン業務についてご紹介します。
定期監査
まず、監理団体では、監理責任者の指示の元、3ヶ月に1度、企業への定期監査を行います。監査の結果は地方事務所・支所の指導課に監査報告書と監査実施概要を提出し報告します。
以下の項目のように、実習生との面談や生活環境のチェックを実施します。労働基準法に違反していないかもチェックしていきます。
- 技能実習の実施状況を実地確認
- 技能実習責任者及び技能実習指導員からのヒアリング
- 技能実習生の4分の1以上と面談
- 実習実施者の事業所の設備、帳簿書類等の確認
- 技能実習生の宿泊施設等、生活環境の確認
訪問指導
上記の定期監査に加え、第1号技能実習生には、1ヶ月に1回の訪問指導を実施します。監理団体の役職員が実習実施者に技能実習の実施状況を確認するとともに、認定された技能実習計画に基づいて技能実習を適正に行わせるのに必要な指導を行います。
訪問指導を行った場合は、指導の内容を記録した訪問指導記録書を作成し、事業所に提出しなければなりません。また、この訪問指導の書類の写しは、事業報告書に添付し、年に1度機構の本部事務所の審査課に提出をします。
実習生の受入れに係る業務
技能実習生を受け入れ、技能実習が開始されるまで、監理団体は送り出し機関とも協力し、様々な業務・手続きを行なっています。詳しい内容は下記の通りです。
- 送り出し機関の選定と契約
- まず技能実習生を送り出す、現地の送り出し機関の選定と契約を行います。 様々な要素を比較し、慎重な選考を行った上で選定・契約をする必要があります。
- 実習生の面接同行
- 海外に住む外国人を採用する際には、受け入れ企業は現地にて、送り出し機関が選別した実習生候補との面接を行います。監理団体はこの面接に同行しサポートやアドバイス等を行います。
- 技能実習計画作成に対する指導
- 技能実習生を受け入れる企業は、技能実習計画を作成し外国人技能実習機構から認定を受ける必要があります。監理団体はこれに対して策定及び指導を行います。
- 技能実習生の入国手続き
- 地方入国管理局に申請を行い入国許可を得る等、技能実習生の入国に関する手続きを行います。
- 入国後講習
- 技能実習生は、入国後、企業に配属される前にこれからの日本での生活に備え、座学や現場見学による一定期間の講習を行うことが義務付けられています。主な内容は日本語、日本での生活一般に関する知識、入管法、労働基準方等技能実習生の法的保護に必要な情報等があります。この講習を実施します。
技能実習生の保護・支援
技能実習生は、異国での生活・実習をするため、慣れるまでは心身主に疲弊することがあります。また、労働や金銭、人間関係などの問題も相談できる人がおらず悩みを抱えてしまうこともあります。
そこで、技能実習生の保護や支援のために、監理団体では、実習生の母国語で相談に乗れるスタッフを準備し、体制を整えています。受け入れ企業には直接相談しづらい内容も、監理団体が入ることで相談しやすい環境を整えているのです。
また、実習生は、一定期間の実習を終える際に、必ず帰国しなければなりません。その際、航空券の手配やスケジュール調整が必要になりますが、ここでも監理団体は所定のサポートを行います。(帰国費用は企業負担)
監理団体の選ぶ際の3つのポイント
ここまで、監理団体とは何か、その役割や業務についても解説してきました。
しかし、数多くの監理団体の中から、自社に合う監理団体を選ぶのは、非常に難しいです。実習生を受け入れるにあたり、採用から帰国後の勤務中まで、長い期間携わることになりますので、選定も慎重に行う必要があるのです。
ここからは、監理団体を選定する際に、見るべきポイントをご紹介します。
実績
まず見るべきポイントは、「実績」です。これまで受け入れた実習生の人数や、どれくらいの期間の事業実績があるのか、という過去の実績を確認しましょう。実績が多ければ良いというわけではありませんが、ある程度の経験がある団体であれば、これまでの事例から対応力もついており、はじめての技能実習生採用でも安心して任せることができるでしょう。
求める業種や職種に対応しているか
2つ目は、「対応している業種・職種」です。監理団体ごとに、どの国の実習生を監理しているのかや、得意分野、何号認定の技能実習に属しているかなど、詳細が異なります。そのため、自社が求めている人材や、受け入れようとしている業種・職種に対応しているかを事前に確認しましょう。
また、監理団体によっては、第3号技能実習の受け入れ不可の場合もありますので、一般監理事業か特定監理事業かについても合わせて確認が必要でしょう。
サポートの手厚さ
最後は、「サポートの手厚さ」です。
監理団体によっては、法令で義務付けられている監理業務以外にも、実習生の生活面や日本語教育、共同生活のマナー教育などにも力を入れている団体もあります。サポートが手厚ければ手厚いほど、技能実習生も安心して生活や実習を進めることができ、企業側からしてもリスクが減っていきます。ここは、監理団体によって異なるポイントですので、事前に確認し、比較要素に入れておくと良いです。
まとめ
今回は、監理団体の役割や業務などを、詳しく解説しました。
技能実習生の採用をスムーズに進めるためにも、監理団体の選定は非常に重要になってきます。本記事を参考に、自社に合った監理団体を探してみてくださいね。
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